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応募作品:裏切られた水曜日 この見出しの固定リンク


応募情報 この見出しの固定リンク

題名:裏切られた水曜日

掲載日:2007-06-05 (火) 00:29:09

著者:Guym


「裏切られた水曜日」 この見出しの固定リンク

「水曜日なら……」
 私が訊ねた時、貴方はそう答えた。
 興味を持ったのは、私。
 告白したのも、私。
 だから、私があなたに合わせよう。
 そう思っていた。

 一年前。
 私は転職した。
 すっかり慣れた会社を辞めるのは、すごく決心のいることだった。
 でも、仕事の忙しい貴方と、少しでも一緒にいたかった。
 だから、貴方が「空いている」と言った水曜日に休めるよう、仕事を変えることにした。
 今までは、土日だった休日。
 友達と遊んだりするのも簡単だったけれど、これからそうはいかないだろう。
 仕方がない。貴方といる時間がとれるなら、それでいい。

 しかし、それは一ヶ月ほどしか続かなかった。
 ある水曜日に、「用事がある」と貴方は言った。
 力なく「そうか」と私は答えた。
 たまには仕方がない。そこまでわがままじゃない。
 でも、次の水曜日も、その次の水曜日も、私は貴方に合うことができなかった。
 電話やメールで話す毎日。
 アプローチは、いつも私から。
 それが数ヶ月続いた。

 私の水曜日は、一人になった。
 土日に遊んでいた友達とも遊べない。
 家事だけしたら、あとはテレビを見て、ちょっと買い物をして……。
 逢えない寂しさだけが募る、つきあう前よりも寂しい休日。

 私はしばらくして知った。
 貴方が水曜日になにをしているかを。
 貴方の友達に、なんてこぼしていたかを。
 それは、仕事じゃなかった。
 大した用事でもなかった。

「たまの仕事休みぐらい、一人でやりたいことをしたい」

 それだけのことだった。
 家で本を読んだり、ゲームをしたり、部屋を片づけたり……。
 たった、それだけのことだった。
 疲れているのはわかる。
 わがままは言いたくない。
 でも、側にいるだけでも邪魔なのか。
 貴方が本を読んでいてもいい。私も側で一緒に本を読もう。
 部屋の片づけも手伝おう。
 ただ、たまに微笑みかけてくれるだけでいい。

 告白をしたのは、私。
 でも、「いいよ」と言ってくれたのは貴方。
 貴方が受け入れてくれた私は、いったいどんな存在なのか。
 受け入れただけで、貴方は私になにも向けてくれないのか。
 ああ……贅沢は言わない。
 私は、貴方を感じられればよかったのに。

 貴方と結んだ、一つの約束。
 それは「水曜日に逢う」ということ。
 私は、その為に頑張った。
 でも、貴方は、いつも貴方が大事。
 私の水曜日は、貴方に裏切られた。

 ……いや……。
 ……違う……。

 貴方は、裏切ったりしていない。
 私を受け入れてくれたのだ。
 だから、裏切ったのではなく、忘れているのだ。
 ああ、そうだ。貴方は忘れっぽいから。
 じゃあ、思いださせてあげなくては。
 水曜日が二人にとってどんなに大事か。
 そうだ。水曜日を……私を……もう二度と忘れないようにしてあげよう。

 私は、つめたいドアのノブを握り、こっそりと作った合い鍵をぐいっと差し込んだ。
 マンションの廊下の明かりの下で、金属のドアがゆっくりと開く。
 私は誰にも見られないように、すばやく中……彼の世界に入りこんだ。
 彼は近くに買い物に行っていて、まだ帰っていない。
 しばらくぶりに来た彼の部屋は、散らかりまくり六畳一間は足の踏み場もなかった。
 つけっぱなしにされた丸い照明は、薄暗くも部屋全体を照らしている。
 足下に散らかった本をふと手にとってめくってみた。
 それは、サスペンス小説だった。
 そんな本が好きだとは、知らなかった。
 つきあっている……本当に私たちは、そんな関係だったのだろうか。
 つきあっているとは、言えなかったんじゃないだろうか。

 ……いや……。
 ……違う……。

 私たちはつきあっていた。
 告白して、受け入れてくれたんだから、それはまちがいないんだ。
 だから、水曜日を忘れないように、ここで貴方の帰りを待つ。
 鞄から、暗い照明を鈍く反射する刃を取りだし、その柄を強く握る。

 ああ……。
 これで貴方は、私と逢う約束を忘れないだろう。
 この大事な水曜日という日を。


評価 この見出しの固定リンク

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一言感想 この見出しの固定リンク

  • 綾姫様の作品から、アイデアをいただきました。読み終わったあと、愛の大事さを感じながら、明るく楽しい気持ちで世界平和を願っていただける作品になるように書きました! (;゚ロ゚)えーw -- Guym 2007-06-18 (月) 15:15:18
  • つぎの作品のOPですか? :D -- たらい 2007-06-18 (月) 21:12:12
  • 読みましたー!!綾姫さんの作品の”裏”になるんですね、こちらはサスペンス仕立てのドキドキストーリーですが、主人公さんは萌え萌えキュートに負けたのか、と思うと、思わずニヤけてしまいます。とりあえず彼ら二人にはWoooのカタログを進呈(笑) -- Nobichan 2007-06-20 (水) 10:08:42
  • まあ、よく読めばわかりますが、綾姫様の話からヒントは得ていますが、リンクはしていません。それに、実はこの話自体にいくつもの裏があります。例えば、性別。 :) -- Guym 2007-06-20 (水) 10:50:37

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