
応募作品:水曜日の奇妙な掟
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応募情報
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題名:水曜日の奇妙な掟
掲載日:2007-06-05 (火) 00:29:09
著者:Tear

「水曜日の奇妙な掟」
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【プロローグ】
その街にはあるひとつの掟が存在した――――。
『水曜日十八時以降の外出を禁ずる』
いつどこの誰が定めた掟なのかすらわからない。
そんな不可思議な掟なのに関わらず、住民達はその掟を破ろうとはしない。考えない。
その街の住民達は疑問すら感じていなかった。
何故、この掟が存在するのか? 何故、意味も分からず守る必要があるのか?
それを彼らに問えばこう答えるだろう。
だったら何故、人はこの世界に存在するんだ? 考えたって答えは出ないだろう? つまりはそういうことさ……と。
すなわち――――この掟の存在はその街の住民にとっては“あたりまえ”でしかないのだ。
これは、そんな奇妙な街の、奇妙な掟に疑問を感じてしまった“奇妙な”少年の物語だ。
1.少年A
その少年は貧しかった。
スラム街で産まれて、スラム街に捨てられて、スラム街で育った。
スラム街では他人に干渉することはないし、各々がその日を生きるために精一杯だった。他人を気遣う余裕なんてありはしない。
そんなスラム街で育った少年にとって、欺す事と奪う事だけが生きる術になったのは当然の成り行きだったといえる。
そして少年にはその才覚があった。
そもそもスラム街で少年が物心ついたときにまず行ったことが“観察”することであった。
少年にはおよそ一歳前後くらいからの記憶が全て鮮明に残っていた。
それがスラム街で産まれてすぐに捨てられても生きてこられた最大の理由だろう。
スラム街の住民の外形、名前、行動パターンから癖まで余すことなく観察し、そして記憶していった。
そして気づいたことは、みっつだった。
すなわちそれは、頭のいい奴が生き残れるということ。
すなわちそれは、ここ(スラム街)の奴らは馬鹿ばかりだということ。
すなわちそれは――――
――――自分は頭がいいということ。
2.搾取するものされるもの
「要するに、情報が全てなんだ。鮮度のいい情報。それを持っている者が勝ち抜けるサバイバルゲームだといえる」
「でもさでもさ、兄貴〜。そんな簡単にはいかないんだよぉ。兄貴みたく頭いいわけじゃないしさ……」
見た目十二、三歳くらいの小さくやせ細った少年が軽く拗ねたような口調で、もうひとりの更に幼く見える顔立ちの整った少年に訴える。
身なりは両者とも揃って見窄らしく、汚れ擦り切れたボロのようなものを身にまとっていた。
「情けない声をだすな。そんな声を誰かに聞かれたらつけ込まれる。この街――、特にスラム街で生き抜くためには搾取する側に立つしかないんだ。俺の唯一の弟分……。だからこそ、可能な限りのスキルを伝授しようとしてるんじゃないか。やる前から諦めるな!」
「ご、ごめん……兄貴。真面目に頑張るよ」
弟分と呼ばれた方が、少年のいつも以上に真剣な口調を感じ取って答える。
「あぁ、それでいい。もう……次って決めたんだからな……」
「次?」
「なんでもない。次のレッスンって事だ! ほらグズグズすんな!」
「う、うん。兄貴」
次の水曜日まで、あと四日――。それまでに――――。
3.掟の裏
物心ついてすぐに、少年は当然の如く疑問を持った。
何故、水曜日の十八時以降は外出してはならないのか――――と。
だから聞いた。
どうして、外に出たら駄目なのか? と。
そして、皆は決まってこう答える。
掟だからだよ――――と。
そして気づく。
自分が異端だと言うことと、自分以外の存在の愚かさを。
そして、少年は考える。
誰一人として、この状況に疑問を感じないのはおかしい。
この状況を作り出している首謀者がいるはずだ。
そして、ここまで大がかりな事をするからには必ずこれには裏がある。
首謀者の利益になる何かが……。
その何かを知ることが出来れば、この生活から脱却できる。
水曜日の特異点……、一体それは何なのか?
次の水曜にでも行動を起こしてみるか?
いや……、少し聞いてまわりすぎた。
今は待とう。
そうだな……今からちょうど一年後に迎える最初の水曜日。
その時に全てを手に入れてやる。
4.そして、運命の歯車は複雑に絡み合い……
少年が弟分と呼ぶことになる彼と出会ったのは、決意の日から数日後の事だった。
初めてであったその日、彼は空腹で路上に生き倒れていた。
行き交う人々にとってそんな光景は日常で、誰一人手を貸そうとはしなかった。
一年間はそんな廻りに溶け込もうと決めていた少年も無視して通り過ぎようとしていた。
していたのだが――、それが出来なかった。
理由は、今考えてもはっきりしない。
行き倒れている彼をみて、ただ同情心からそうしたのか、ただの気まぐれか。
少年は彼に声をかけた――かけてしまった。
「おい、生きているか?」
その後、彼に食べ物を分け与えたら少年を兄貴と慕ってくるようになり。
初めのうちは鬱陶しかったが、そのうちに一人じゃないことのうれしさを感じるようになり、自然と一緒に生活するようになった。
その時は永続ではないと分かっていながら――、今はその幸せに浸っていたかった。
そして、時はあっという間に過ぎ、その時はきた。
日は傾き始め、ゴーンゴーンと耳障りな鐘の音が聞こえてくる。
水曜日の十七時に鳴る鐘の音である。
住民達は一様に家の中に帰って行く。
少年はじっと家の中で息を潜めていた。
弟分は既に眠りに落ちていた。
そして、十八時。
少年は弟分を起こさないようにそっと立ち上がり、玄関の戸に手をかける。
今更躊躇はしない。
覚悟なんてものは、この一年間で十分に出来た。
弟分の事は確かに気がかりだし、ずっと一緒に生きていたかったが、こんな賭ともいえる危険な橋を渡らせるわけにはいかない。
「お別れだ……」
小さく呟き、戸を開こうとしたその時。
「駄目だよ、兄貴。外に出るのは駄目だよ」
唐突に声をかけられ、驚きの形相で少年が後ろを振り向くと、弟分が起きてじっとこちらを見つめていた。
その目にはいつものような頼りない幼さは欠片も感じさせず、ただ諭すような目で少年を見ていた。
「ごめん、でも無駄だ。もう決めた事だ。今更変わらない。俺はここから抜け出す」
「兄貴はわかってない、何もわかってないよ。その扉の外に幸せなんて転がっちゃいないんだ。希望なんてありはしないんだ。その向こうにあるのは、ただの無だけなんだ!」
「わかってないのはお前の方だろ? この街の住民はおかしい。何も考えない、何も疑問に思わない。だったら、俺が……。俺が明らかにしてやる、すべてを!」
少年の決意を聞き、彼は俯き、悟り、そして告げる。
「わかったよ兄貴。もう何を言っても駄目みたいだ。兄貴は世界からズレようとしている。僕はそれをなんとか修正したい……。こんな感情を持つなんて自分でも馬鹿みたいだけど……、それでも、ほんとうの兄貴みたいに思っているから。だから、言ってわからないなら、見せてあげるよ僕が」
そういうと、彼は玄関の戸に手をかけている少年をはねのけ、そしてその扉を開き、外へ――――一歩踏み出した。
その瞬間――――。
激しい閃光が走り、一瞬世界が白に包まれて――――。
眩しさに目を捕らわれ、少年が再び目を開いたとき。
そこに彼の姿はなかった。
5.本当の裏
「で、どうなったんだ?」
彼は聞く。
「どうなったって、それで終わりさ」
彼は答える。
「その弟分の消失がショックでしばらく口も聞けないようなパニック状態になって、その後は絶対に水曜日の夜に外に出ようなんて考えは起こさなくなった。まぁ、ちょっとツマラナイ結果ではあるかな?」
「その弟分ってのが、今年入社の新人君ってわけか……」
「あぁ、そいつさ、箱庭のAI(人工知能)に結構感情移入しちゃってたみたいでさ、わざと例のAIの前で消失をしたあとにさ……。ちょっと泣いちゃったらしいぜ?」
「それはそれは……。まぁ、わからないでもないよな。一年間監視してたAIとの生活が終わりだもんなぁ〜。俺でもちょっと涙腺ゆるんじゃうかもね」
「でもさ、そんな監視とかめんどくさいことさせなくてもさ、そのAIのメモリー書き換えちゃえば終いだったんじゃねぇの?」
「う〜ん、まぁ、それでもよかったんだけどな……。なるべくこっちの手を加えないで成長させていきたかったんだよね。俺の束縛プロテクトを破ったレアケースのAIだったしさ」
「なるほどね〜。まぁ、でも改めて観るとすごいよな。この箱庭プログラムは……。プログラムで決まった行動を取らせるわけではなく、きっかけだけ与えて後は自ら成長し、思考していくAIか……。やっぱ、すごいよお前は。こんなシステムをたかがゲームの為に使うってのも勿体ないな」
「ははは、どっかの企業にこのシステム売り込んじゃうってか?」
「いいなそれも。あ、冗談はいいとしてひとつ疑問だったことがあるんだけど聞いてもいいか?」
「ん? なんだよ?」
「いやさ、なんで水曜の十八時以降は外出禁止なわけ? その掟を組み込んでいる理由がわからなくてさ……」
「あぁ、それね」
「この箱庭の自動デバックシステムなんだけどさ、まだ未完成で街の外のデバックまでは出来ないんだよね。で、この箱庭はまだまだ穴が多くて、最低でも十時間に一度はメンテしないとバグが増大してひどいことになっちゃうんだなこれが。そんな状態で住民を外出させるわけにはいかないと……」
「ん? で、それと水曜と何の…………」
そこまで言って彼は気づく。
そして、もう一方の彼はその表情をみてにやりとして言った。
そう、だって、水曜日はノー残業デーだろ――――と。

評価
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一言感想
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- ああ……ネタはいい。ネタはいいのになにかもう一つ。これ、構成をもう少し練ればすごくおもしろかったのに。特に結末が冗長気味で、最後に「どんでん返し!」という勢いがなく、「ど〜んで〜んがえしぃ〜」になってしまっている気がします。惜しいな、これ……。
-- Guym 2007-06-20 (水) 17:57:39
- ネタがいいよね。もっとこれ、面白くなるよ。あぁ、もったいない……。(´・ω・`)
-- Shiori 2007-06-21 (木) 09:14:11
- プロローグとか1章とか、神視点で解説しているところをばっさり切って、主人公である「少年」が喋ったり行動したりするシーンのみで固めたほうが、最後のネタが生きるようになります。主人公に感情移入させるということは、彼が生きているという実感を与えることだから、じつは彼が生きていなかった、という展開が意外なものとなる道理。
-- Aruma 2007-06-21 (木) 18:54:45
- 仮想空間ネタって、いろいろ広がって面白いよね! 結構長い展開なのにちゃんと最後までまとまってて、とっても面白く読みましたヨ〜
-- Nobichan 2007-06-22 (金) 01:11:09
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| ページ作成: | Tear [64u2YVFmjINE] | - 2007/06/22 01:11:22 JST(516d) |
| 最終更新: | ゲスト | - 2007/06/22 01:11:22 JST(516d) |
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