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あなたを熱愛します この見出しの固定リンク

仲之 栞 著


 早朝、駅前を駆けぬけようとした時にそのワゴンを見た。花を満載したワゴンの横で、長い髪をポニーテールにした女性がバケツに水をくんでいた。白い大きな花をかたどった、木彫りの髪どめが目をひいた。
 つい立ち止まってワゴンを眺める。彼女がこっちを向いた。
 視線があった時、彼女は花がほころぶように笑った。
「ばらはないんですか?」
 思わず近付いてたずねていた。
「ごめんね。おいてないの。でも……」
 ソフトな声で言いながら、彼女はワゴンに視線を移動させる。そして花束を一つ、ぬきだした。
「ピンクのカーネーションなら、あるわ」
「あの、可愛いんだけど、でも……」
 微笑みとともに手渡された小さな花束。反射的に受け取ってしまってから、ついとまどった声がでる。
 欲しかったのは、ばらだったから。
「真紅のばらより、あなたには似あってるような気がするんだけどな」
 軽い口調だったけど、つい、どきりとする。
「あのね。花ことば、教えてあげる」
 いたずらっぽい笑み。
 彼女の顔が耳元に近づき、離れた。微かに甘い花の香り。
「あ……」
 ほおが熱くなる。思わず、小さな花束の影に身を縮めてしまう。
「きっと、うまくいくわよ」
 ウインクひとつ。
 優しい声と微笑みに、可憐なカーネーションの花束を見つめた。
 ピンク、ただ一色だけの花束。
 想い浮かぶのは一人。
 彼女に向かってぺこりとお辞儀をする。
 優しい笑顔に勇気付けられて、再び目的地に向かって駆けだした。

FIN

☆カーネーション−CARNATION−
種 類 − ナデシコ科
原産地 − 南欧、西アジア
花 色 − 紅・桃・白・黄・絞り
花 期 − 夏〜秋
花言葉 − あなたを熱愛します(桃色)、他多数


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