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Guymな話:第六夜「銀と、金と……」 この見出しの固定リンク

芳賀 概夢


 冬。
 時おり吹く風が、肌を突き刺すように流れていく。
 肌は乾き、唇が荒れる。
 手はかじかみ、足は震える。
 だが、そんな中でも、子供たちは元気に遊んでいた。
 とある公園。中央には古くからある“妖精の湖”と呼ばれる泉とは言えない池があり、その周りには林や広場がある。風景の美しい自然公園であった。
「ママァ〜、はやく、はやく!」
「はいはい、やす君。そんなに慌てないの」
 小学校三年ほどの男の子が、母親を呼びながら“妖精の湖”に向かって走っていった。
「ほら、あぶないわよ!」
 その池はたいした大きさはない。しかし、その水の色は美しく、キラキラと輝いている。誰もが“妖精の湖”という呼び名を聞いても、納得できそうな神秘的な美しさであった。
「だいじょうぶだよ、ママ。……ほら」
 子供は母親が心配そうな顔をしているのを見て、おもしろがり柵を越えて湖に近づく。
「やす君!!」
 母親は怒声をあげた。心配のあまりに。
 だが、それが間違いだった。
 驚いた子供は足を滑らす。
「うわっ!!」
 子供は母親が追いつく前に、湖にズボンっと落ちてしまう。
「た、たすけっ……て! マッ……マ……」
 それは不自然だった。
 じたばたとしながらも騎士に向かおうとしている子供は、まるで吸い寄せられるように段々と湖の中央へ流されていく。
 そして、人を異界に引きずり込む妖精でもいるかのように池の中に沈んでいった。
 母親は、池のほとりについたはいいが、もう手がとどかない。
「やす君! 誰か! 誰か助けて!!」
 彼女は泳げなかった。必死に周りの人に助けを呼んだ。
「誰か! 助けて!」
「どうしたんですか!?」
「こ、子供が! 湖で溺れてんです!!」
 偶然、その辺りを歩いていた人達が集まってくる。
 そして、その中の一人の男が、意を決して湖に飛び込もうとした。
 ――その時!
 子供が足掻いていた上あたりに、波紋ができて美しい女性が現れたのである。
 彼女は半透明の体を水面に浮かせて立っていたのだ。
「な、なんだ!?」
 飛び込もうとした男は、思わず躊躇する。
「だ、誰だ、お前は?!」
「私は、この湖の妖精。……あなたがたは、何をいったい騒いでいるのですか?」
 美女は艶やかな着物をふりながら、優しい笑顔で微笑んだ。
「わ、わたしの子供が湖に落ちたのです!!」
「なるほど……ちょっと、お待ちなさい」
 妖精と名乗った美女は、母親の訴えを聞くと、静かに水の中に吸い込まれていく。
 そして、ニ秒もたたないうちに、また現れた。
 その手には、湖に落ちた子供――やす君が抱かれていた。
 但し、全身が銀色に輝いている。
「貴方の落ちた子供というのは、この銀で出来た子供ですか?」
「へっ!?」
 一瞬、妖精の言葉により、沈黙が生まれる。
「そ、そんなわけないでしょ! 違います!」
「そうですか。ちょっと、お待ちなさい」
 また妖精は沈んでいった。
「……おい、なんか、こーいう話ってなかったか?」
「ああ。あったような気が……。じゃあ、やっぱり次はあれかな?」
 ギャラリーの呑気な声が母親の胸を締めつける。
 しかし、ギャラリーの予想は見事に当たっていた。
「お待たせしました。貴方の落ちた子供というのは、この金で出来た子供ですか?」
「んっなわけないでしょう! 全然違います!!」
 妖精が沈み、そして現れる。
 彼女の抱いている子供は、今度こそ本当の子供であった。
「貴方の湖に落ちたという子供は、この青い顔をした子供ですか?」
「そ、そうです! や、やす君!」
 妖精の手から母親に、その身柄が渡される。
「ああ、なんと正直な人なんでしょう。……よろしい。貴方に、この銀の子供と金の子供もさし上げましょう。幸せに暮らすのですよ。さようなら〜」
 妖精はそう言うと、金と銀の子供を母親の横に置き、また元の湖に消えていった。
「し……幸せに暮らせですって!? わ、私の子供を返してよ!」
 母親の腕に抱かれたやす君は、のんびり屋の妖精の為にたっぷり水を飲んでいた。


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